乗っただけで割れる屋根材
屋根のメンテナンスのご相談を頂きました。
「30年前くらいに増築した箇所の屋根の表面が捲れてきてどうにもならない」
という内容でした。
使われていた屋根材はリフォーム業界で知らない人はいない、
【セキスイかわらU】
という屋根材。
まだ雨漏りこそ起こしてはいなかったものの、
割れが酷いところなどは時間の問題というところもありました。
セキスイかわらUとは、一体どんな屋根材でしょうか?
セキスイかわらUとは?
セキスイかわらUとは、1975年に発売開始されたセメント系の屋根材です。
瓦のような形状でありながら軽くて薄くて丈夫、
既存のスレート屋根の上などに被せるカバー工法も可能な事から
多くの建物の上に採用されました。
当初かわらUには、アスベストが高い割合で入っていましたが、
後にアスベストの危険性が問題視されるようになり、
1990年、アスベストが入っていないタイプのかわらUが販売され始めました。
セキスイのブランド力と実績により、
ノンアスベストのかわらUもその後多くの屋根に採用されています。
ですが、発売されてしばらくすると、
表面の剝がれや割れなどの報告が相次ぎました。
一体どういう事でしょうか?
アスベストの利便性
アスベストという物質は、安価で断熱性・吸音性・不燃性・密着性に優れているため
古くから多くの建材に使用されてきました。
ですが吸入すると重大な健康被害を引き起こすことがわかってからは徐々に規制が始まり、
2012年には例外なく全ての製造物に使用することが完全に禁止となりました。
完全な規制に至るまで長い年月がかかってしまったのは
そのアスベストの高い利便性に匹敵する代替材料が見つからなかったことが
大きく影響していると思われます。
セキスイかわらUも、アスベストが入っていた時代は丈夫で長持ちする屋根材でした。
しかし、1990年以降に製造されたノンアスベストタイプは非常に脆く
クレームが相次ぎました。
アスベスト問題を解決するためにいち早くノンアスベスト品を開発して
世に出したものの、研究や検証が十分でなかったものを焦って発売してしまった
いわば「見切り発車」的な発売だったと思わざるを得ません。
ノンアスベストのかわらUは塗装が出来ない
ノンアスベストのかわらUの劣化のスピードはとても早いです。
数年もたたないうちに表面の塗膜が剝がれ、中の機材がむき出しになってきます。
物理的な衝撃が加わってもいないのにひび割れが起こり、次々に割れが広がります。
こんな状態の屋根にいくら塗装をしても無駄です。
塗装をするために上に乗るだけで割れてきてしまい
仕事になりません。
ですがこちらのお施主様曰く、
「何度か業者さんに声をかけられて、何回か塗装した」
とのことでした。
単に知識がなかっただけなのか、
知っていて勧めたのかはわかりませんが
リフォーム業界の闇の部分であると思います。
何度もメンテナンスをしているのに一向に良くならない。安心できない。
どうしたらいいのだろうと悩んだ末に、
私達のところにご相談いただいたのが事の経緯です。
かわらUは葺き替えが賢明です
塗装によるメンテナンスはお勧めできない事をご説明し
屋根の葺き替えをご提案しました。
屋根材にアスベストが入っているか入っていないかは
施工した年月や屋根の形状によって目視である程度判断はつきます。
ですが、撤去・処分するにあたっては
メーカーに「ゼロアスベスト証明書」なるものを
発行してもらわねばなりません。
今回もメーカーに証明書を発行してもらい撤去していきます。
勾配が緩い屋根だったので、
作業はきつくありませんでした。
屋根材を捲り終わりました。
屋根材の下に敷いてあったルーフィング(防水シート)は
ところどころ穴が空いていましたが
下地の合板はしっかりしています。
当初は下地の合板から新しくする予定でしたが
その必要はないと判断。
施主様もできるだけ費用を抑えたいとのことでしたので
新しい合板を敷きなおすことはせず、この上に新しくルーフィングを敷き
ガルバリウム鋼板の屋根材を葺いていきます。
改質アスファルトルーフィングを敷き終わったところです。
ガルバリウム鋼板の立平葺き完成です。
板金職人さんがきれいに仕上げてくれました。
これで、もう屋根に悩まされることはないでしょう。
そして、悪質?知識不足?な業者さんに声を掛けらることもなくなりますね!
お家の屋根に「せきすいかわらU」を使われていて、
剝がれや割れ、メンテンナンス方法に困っている方がいらっしゃいましたら
早めにお近くの工務店やリフォーム店にご相談してみてください。
誰かに塗装を勧められても、絶対にしてはいけません。
ご注意ください!